不倫慰謝料とセットで考えたい求償権を弁護士が徹底解説
不倫で慰謝料を支払う際に、または、支払った後にしばしば問題になるのが求償権の存在。今回のコラムでは、不倫慰謝料の求償権について、弁護士が徹底解説したいと思います。
不倫慰謝料の求償権とは
不倫は共同不法行為
夫婦間には、法律上、貞操義務というものがあります。これは他の異性と性交渉してはいけないという義務で、不倫=不貞行為は、この義務によって守られるべき平穏な夫婦生活を侵害する不法行為として、慰謝料を支払う義務が生じます。
この不法行為を行っているのは、不倫した当事者双方であり、共同不法行為として、双方が慰謝料を支払う義務を負うことになります。これを専門用語で、不真正連帯債務といい、不倫当事者双方が、連帯して慰謝料支払義務を負うことになります。
不倫慰謝料の求償権
共同して不法行為をした不倫当事者は、両方とも慰謝料を支払う義務を負うのですが、請求する側としては、不倫をした双方に慰謝料を請求することもできれば、どちらか片方だけに慰謝料のすべてを請求することもできます。(双方に請求する場合、倍額を請求できるのではなく、請求できる金額は「二人合わせて一定の金額」となります。)
もし、不倫行為をした片方だけにすべての慰謝料を請求しそれが支払われると、慰謝料を支払った側は不倫をしたもう一方側が負担すべき慰謝料まで余分に多く負担したことになります。ただし、余分に多く支払ったといえるのはあくまで他方不倫相手に対してだけであり、請求者には余分に支払ったと反論することはできません。
こうしたとき、自分の負担分を超えて慰謝料を支払った側は、もう一方側に対して、慰謝料の超過負担分を請求することが認められます。この超過負担分を請求する権利のことを「求償権(きゅうしょうけん)」と言います。
この負担割合は、ケースバイケースで判断され、より不倫について責任が重いものが、負担割合も大きくなります。
求償権が問題になるケース
不倫されたものが離婚しない場合
不倫をされたものが離婚しない場合には、自分の配偶者には慰謝料請求をせずに、不倫の相手方にのみ慰謝料を請求するケースが多くみられます。婚姻関係を継続する場合には、いわばサイフが共通の状態が継続するため、夫婦間で慰謝料を請求しても実質的な意味が薄いからです。
上記のような場合、不倫慰謝料を仮に全額支払い、その後、求償権を行使すると、相手夫婦に支払ったお金の一部が返還される形になるため、無意味なお金の移動が発生します。
そのため、慰謝料を請求された際には、負担割合を考慮し、減額した慰謝料を支払い、後の求償権を放棄するという示談が結ばれるのが一般的です。
不倫されたものが離婚する場合
不倫されたものが離婚する場合には、通常、自己の配偶者および不倫の相手方の双方に慰謝料を請求するため、求償権の問題が顕在化することは多くありません。ただ、この場合でも、自己の負担割合を超えて慰謝料を請求された場合には、当然、求償権の問題が発生します。
慰謝料を請求する側は、不倫当事者双方に、自由にどんな割合でも請求することができますので、請求された側は、自己の負担分を超えていることを理由に請求を拒むことはできません。ですので、慰謝料を一旦全額支払い、自己の負担分を超えた部分については、別途、他方不倫当事者に対して、求償権を行使する必要がでてきます。
慰謝料を請求されたら、または、慰謝料を支払ってしまったら弁護士に相談
慰謝料を請求された場合、上記のように「相手夫婦が離婚しない場合」には、無意味な金銭の移動を避けるために、求償権を放棄することを前提に減額できる可能性が非常に高いです。
また、慰謝料を全額支払った後であっても、求償権を行使し、自己の負担割合を超えた部分は取り返すことが可能な場合もあります。
これらの求償権の行使については、専門性の高い事柄なので、ご自身で交渉するのは困難なことが少なくありません。不倫問題や慰謝料、求償権について経験豊富で実績のある弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所は、不倫慰謝料問題の解決に注力し、多数の案件を手かげてきた実績があります。不倫慰謝料を請求されてお困りの方や、既に不倫慰謝料を全額支払ってしまった方で求償権でお金の一部取り戻したい方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
-
前の記事
弁護士が解説する不倫慰謝料を減額しやすい事例10選 2021.06.18
-
次の記事
不倫で慰謝料を請求された際、弁護士に相談するメリット・デメリット 2021.07.02